はじめに
「不倫をしてしまったが、今の配偶者とはもうやっていけない。」、「離婚して新しいパートナーとの人生を歩みたい。」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。しかし、自ら不倫という不貞行為を行い、婚姻関係を破綻させた側の配偶者(有責配偶者といいます。)からの離婚請求には、判例・裁判例上、厳しいハードルが課されます。
日本の裁判所は、「自ら離婚原因を作った者、自分の都合で勝手に離婚を成立させることは正義に反する」という考え方を基本としているからです。とはいえ、当然ながら、有責配偶者であるからといって、一生離婚できないわけではありません。
不倫した側が離婚請求をする時の注意点
結論から申し上げますと、不倫をした側が離婚を求める場合、相手が拒否しているときであっても、すぐには離婚できないが、一定の条件を満たせば離婚が可能となります。ここで重要になるのが、「有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)」という概念です。
有責配偶者とは
不倫(不貞行為)や暴力(DV)、悪意の遺棄など、婚姻関係を破綻させる直接的な原因を作った側の配偶者を指します。判例上、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
離婚が認められるための「3つの要件」
昭和62年の最高裁判決以降、有責配偶者からの請求であっても、以下の3つの要素を満たす場合には、例外的に離婚が認められると言われています。
- ① 相当の別居期間: 夫婦の年齢や同居期間と比較して、相当長期の別居が続いていること(一般的に、未成年の子がいない場合で5年〜10年程度が目安とされることが多いですが、事案によります。)。
- ② 未成熟の子がいないこと: 「未成熟の子(自立していない子)」がいる場合には、離婚によって育児に対する悪影響が出るため、離婚が認められにくくなります。
- ③ 配偶者を過酷な状況に置かないこと: 離婚によって相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるような場合には、上記②同様に、離婚が認められにくくなります。
不倫した側が離婚請求をする時の注意点
有責配偶者が離婚を目指す場合、通常の離婚以上に慎重な戦略が必要です。特に以下の3点は、避けては通れない壁となります。
高すぎる慰謝料の判断
やはり、不倫をした以上、慰謝料の支払いを免れることは困難です。
通常、不貞による慰謝料相場は100万円〜300万円程度と言われますが、有責配偶者から離婚を切り出す場合、相手は「絶対に離婚しない」と頑なになることが予想されます。このとき、相手を納得させるために、相場を大きく上回る「解決金」(実質的に上乗せ慰謝料)を提示せざるを得ない局面が多々あります。場合によっては、ご自身の名義の住宅を相手方に渡し、生活拠点を保証することで離婚を認めてもらうような事例すらあります。
このように、金銭的な負担は非常に大きくなることを覚悟しなければなりません。
別居を選択した際の婚姻費用
また、離婚が成立するまでの間、収入の多い側は少ない側(特に子どもがいる側)に対して、生活費を支払う義務があります。これを「婚姻費用」と呼びます(省略して婚費(こんぴ)ということもあります。)。
不倫をして家を出た場合でも、この義務は消えません。このため、相手方から婚姻費用の支払を求められた場合、これを拒むことはできません。有責配偶者からの離婚請求では、裁判所は別居期間の長さを重視するため、離婚成立まで5年、10年とかかるケースがあります。その間、ずっと婚姻費用を支払い続けるコストは膨大です。仮に月額10万円であっても、5年間で600万円を支払うこととなります。
子への影響
もちろん、お子様にもあなたが不貞行為をしたことや、不貞をしたにもかかわらず離婚を切り出していることは知られるでしょう。
「不倫をした親には親権がない」というのは誤解ですが、離婚を急ぐあまり強引な手法をとれば、子どもとの面会交流が制限されたり、子どもの精神状態に悪影響を及ぼしたりします。また、子どもとの面会交流時に、子どもの気持ちがあなたから離れてしまうことも想定されます。
裁判所は「子の福祉」を最優先するため、子どもへの配慮が欠けていると判断されれば、離婚手続自体が不利に進むリスクがあります。
離婚にかかるもの
このように注意点が多い有責配偶者からの離婚請求ですので、有責配偶者の離婚は、いわば「時間と金の消耗戦」です。これに耐えるために、以下のとおり、時間・費用を掛けなければなりません。
時間(相応の別居期間)
上記のとおり、裁判で離婚を勝ち取るには「長期間の別居」という客観的な事実が必要です。相手が首を縦に振らない限り、裁判所が「夫婦関係は形骸化している」と認めるまで、何年も待ち続ける必要があります。この「時間」が最大のハードルとなります。
この間は、当然ながら不貞相手との再婚も叶いません。新しい人生をスタートさせるためには、多くの期間を要します。
費用(短期で離婚したい場合は、相応の慰謝料が必要)
この時間と天秤に掛けることになるのが、金銭です。相手に「早期に、今、離婚に応じた方が得だ。」と思わせるには、相応の慰謝料など、金銭的給付をするしかないでしょう。例えば、以下のような割り切りが必要です。
- 財産分与での譲歩: 本来半分にする財産を、相手に多めに渡す。
- 解決金(慰謝料)の積み増し: 慰謝料とは別に、生活準備金などの名目で数百万円単位の金銭を支払うよう求められるかもしれません。
- 相手方が望む財産を渡す: 相手方の望みが生活を変えないこと自体にあるのであれば、住宅の所有権を移す、子どもが自立するまでの居住を許すといった配慮が必要となる場合もあります。
不倫した方が弁護士に依頼するメリット
このように非常に多くの困難を抱える有責配偶者からの離婚請求であるからこそ、専門家である弁護士に早期に依頼するべきでしょう。自力での交渉は、いたずらに相手方の感情を逆なでし、泥沼化するリスクが高いです。
以下、不倫した方が弁護士に離婚請求を依頼するメリットをご紹介します。
感情的な交渉を避けられる
まず、感情的な交渉を避けられる点には意義があります。
不倫をされた側にとって、有責配偶者からの離婚の申し出は「裏切りを重ねる行為」に映ります。直接話し合おうとしても、罵倒されたり、話し合い自体を拒絶されたりして、一歩も進まないのが通常でしょう。これに対して売り言葉に買い言葉で争ってしまうと、離婚協議は暗礁に乗り上げてしまいます。
このような場合に、弁護士が代理人となることで、冷静な法的議論の場を作ることが期待でき、本人同士の直接の衝突を回避できるといえます。また、相手方からしても、冷静な第三者が間に入ることで、相手方が冷静に離婚と引き換えに求める条件を提示する土台もできるといえます。
適切な慰謝料
また、弁護士が間に入れば、極めて高額で法外な慰謝料支払は避けられます。
相手方が感情的になると、「慰謝料1000万円払え。」といった、法外な要求をしてくることがあります。色々な経緯があるでしょうが、離婚された側の感情を想像すれば、当然のことかもしれません。
弁護士がいれば、判例に基づいた妥当な金額を提示したり、法的に根拠のない過剰な要求を毅然と退けたりすることができます。もちろん、あなたが「離婚するためならここまでは支払う。」というラインを見極めた交渉もできるでしょう。
早期での離婚成立
弁護士が間に入ることで、離婚協議が泥沼化・長期化することを避けられるケースは多くあります。弁護士は、どのような条件を提示すれば相手が納得する可能性があるか、過去の経験から着地点を探る交渉のプロです。また、調停や訴訟の手続を熟知しているため、協議・交渉が困難である場合には、無駄な時間を省き、最短ルートでの離婚成立を目指すことができます。
有責配偶者が誤解されがちなポイント
ちなみに、ご相談にいらした多くの方が「不倫をしたから、何もかも失う。」と嘆かれますが、法律や裁判例は、それほど単純ではありません。以下の誤解しやすいポイントにはご注意ください。
親権
まず。「不倫をした親は親権を持てない」というのは、法的には間違いです。 親権の判断基準は「どちらが子どもを育てるのに適しているか(継続性の原則、監護能力など)」であって、不倫という「配偶者への不貞」と「親としての適格性」は、ある程度別問題として扱われます。もちろん、不倫相手に夢中で育児放棄をしていた等の事情があれば別ですが、不倫=親権喪失ではありませんから、早々に諦めることのないようにしましょう。
財産分与
また、「不倫をしたから財産分与はもらえない」というのも間違いです。財産分与は、婚姻中に夫婦で築き上げた財産を清算する手続であり、不倫の責任(慰謝料)とは切り離して考えられます。
理論上は、不倫をした側であっても、夫婦の共有財産の半分を受け取る権利があります。実務上は、そこから慰謝料を差し引いて調整することが一般的といえるでしょう。
さいごに
以上のとおり、不倫をしてしまった方の離婚請求について解説しました。
不倫をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、茨の道です。しかし、誠実に謝罪の意を示し、経済的な補償や子どもへの配慮を尽くすことで、解決への道が開けることが多いです。
最も避けるべきは、焦って無理やり家を追い出そうとしたり、生活費を止めたりすることでしょう。そのような行為は「悪意の遺棄」など、更に別の離婚原因とみなされ、さらに離婚への道が遠のきます。
自分の過ちを認めつつも、新しい人生に向けて前向きな解決を図りたいのであれば、まずは弁護士にご相談ください。あなたの状況に合わせ、法的に守るべき権利と、譲歩すべきポイントを整理し、泥沼の争いを早期に終息させるお手伝いをいたします。お悩みの際には、離婚事件の実績を多数抱える当事務所に、ぜひご相談ください。
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