ギャンブル依存症は、夫婦関係に深刻な影響を与え、離婚原因となることは少なくありません。ギャンブル依存症と一言でいっても、その対象はパチンコ、スロット、競馬、競艇、オンラインカジノなど多種多様です。ひとたび配偶者がギャンブル依存症となってしまうと、一家は貧困に陥ります。また、ギャンブル依存症が原因で経済的DVが起きるケースもよくあります。
特に、配偶者のギャンブルに関する行動が生活を破綻させるほどになると、「婚姻を継続し難い重大な事由」として法的に離婚が認められる可能性が高まります。
このページでは、ギャンブル依存症の離婚率と、ギャンブル依存症を理由に離婚する方法について解説します。
目次
1. ギャンブル依存症の離婚率は?
ギャンブル依存症を直接の原因とする離婚率の公式な統計は確認できませんが、ギャンブルや浪費が離婚の一因となっているケースは非常に多いです。
令和2年の法務省の調査によると、協議離婚のうち、「浪費」が離婚原因として約17%、「ギャンブル」が約10.5%と回答されており、合計で約27.5%もの夫婦(協議離婚する夫婦の4分の1以上!)が浪費やギャンブルを原因として離婚に至っていることがわかっています(2020年法務省「協議離婚に関する実態調査」より)。
この数値は、ギャンブル依存症に限らず浪費全般を含みますが、ギャンブルが関わる経済的な問題が、多くの夫婦にとって深刻な破綻原因となっていることを示しています。配偶者のギャンブル依存症で悩んでいる方は、あなただけではないのです。
2. ギャンブル依存症で離婚できる?
ギャンブル依存症そのものが、民法が定める法定離婚事由(民法770条1項)に直接明記されているわけではありません。しかし、ギャンブル依存症によって引き起こされる行動を、以下の離婚事由に該当すると主張する余地はあります。
・悪意の遺棄(民法770条1項2号)
生活費をギャンブルに使い込み、家族に生活費を渡さない、または生活費を著しく不足させる行為は、夫婦の同居・協力・扶助の義務を怠る「悪意の遺棄」に該当する場合があります。
・その他婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)
ギャンブルによる多額の借金、借金が原因で家族が借金取りから督促を受けるなど生活が脅かされている、ギャンブル中心で家庭を顧みない、暴言・暴力(DV/モラハラ)があるといった場合、夫婦関係が修復不可能なほど破綻していると判断され、離婚が認められる可能性が高くなります。
まずは当事者間の協議離婚を目指し、合意できない場合は調停、それでも不成立の場合は裁判へと移行します。裁判では、離婚事由が認められなければ離婚を認める判決はでませんから、上記のような法定離婚事由の有無が争点となります。
3. ギャンブル依存症の配偶者による被害
ギャンブル依存症の配偶者は、単にお金を使うだけでなく、家族の生活や精神状態に深刻な被害をもたらします。配偶者のギャンブル依存症にお悩みの方は、これらの問題点に目を向け、前向きに離婚をご検討ください。
3-1. 生活費の使い込みや借金
まず、生活費の使い込みや借金が最も一般的な被害です。ギャンブル依存症の配偶者は、給料の大半や貯金をギャンブルに使ってしまったり、それを隠すために借金を繰り返したりします。これにより、家族の生活費が不足し、光熱費・家賃の滞納や、借金の督促といった経済的な苦境に立たされます。
配偶者が個人的に作った借金について、もう片方の配偶者に返済義務はありませんが、連帯保証人になっている場合は返済義務を負いますから注意が必要です。配偶者の借金の連帯保証人になる際には、借金の原因がなんなのか、必ず確認しましょう。
3-2. ギャンブル中心の生活(家族の時間よりも優先)
また、配偶者の生活がギャンブルを最優先する生活になり、家族との約束や育児・家事がおろそかになる場合も多いです。こうなると家族の精神的な結びつきが失われ、夫婦関係の破綻を招きます。
平日は仕事で家庭におらず、土日祝日は日がな一日パチンコに行ってしまうといった配偶者に悩まれている方は多くいます。
また、最近は主婦層のオンラインカジノ依存が目立ちます。オンラインカジノは、手元の現金が減ることなく、かつ、短時間で多額の掛け金をかけることができてしまいます。このため、お金が減る実感を持つことなく、家事そっちのけで依存してしまう事例が多いのです。
3-3. モラハラやDVにつながる
ギャンブルで負けた際のストレスや金銭問題から、配偶者や家族に対して暴言(モラハラ)や暴力(DV)を振るうケースがあります。これは精神的・肉体的な苦痛を与える重大な問題であり、当然ながら、離婚事由の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」として考慮されます。
ギャンブルで負けることもそうですが、金銭的余裕がなくなると、それが精神の余裕・健康にダイレクトに影響するのです。このため、普段は特段問題ない人であるにもかかわらず、ギャンブルに負けた際や給料日直前の困窮期になるとモラハラ・DVをする、という事例もあります。
4. ギャンブル依存症を理由に離婚をする方法
このようなギャンブル依存症の事例で離婚を有利に進めるためには、配偶者のギャンブル依存が原因で夫婦関係が破綻している事実を示す証拠を収集することが重要です。
4-1. 家計簿や通帳の記録
まずは、預貯金の使い込みや借金の履歴を示す通帳のコピー、借入の契約書、督促状などを手元に残しましょう。
生活費が不足し、家計が困窮していることを示す家計簿や、配偶者自身の収入がギャンブルによってどのように費消されているかを示す証拠も確保できると良いです。例えばオンラインカジノであれば、クレジットカードや預貯金の履歴に証拠が残ります。競馬・競艇などについても、オンラインで馬券等を購入していれば同様です。
4-2. SNSでの発言
次に、配偶者がギャンブルへの熱中ぶりや借金の事実をSNSなどに投稿している場合、そのスクリーンショットも証拠となり得ます。不思議なもので、ギャンブル依存症の方は、ギャンブルで勝った場合も負けた場合も、SNSにその事実を投稿しがちです。多くの証拠を確保できればできただけ得ですので、投稿する度に証拠化しておきましょう。
ただし、証拠収集の際は、相手方のプライバシー侵害等に注意が必要ですから、証拠収集方法についてはぜひ弁護士にご相談ください。
4-3. 家庭への影響を示す証拠(光熱費や家賃などの滞納催促)
また、ライフライン(電気、ガス、水道)や家賃の滞納を知らせる通知書、督促状など、生活が脅かされている客観的な証拠も確保しましょう。配偶者が生活費を渡さない場合には、この事実を日記等に記載しておきましょう。
これらは、経済的DVの証拠となりますから、離婚調停・訴訟を有利に進める材料となります。
4-4. 負けたストレスによる暴言・暴力の証拠
更に、配偶者がギャンブルに負けた際に、暴言・暴力を振るうようであれば、暴言・罵倒を録音したもの(ICレコーダーやスマートフォンの録音機能)や、暴力(DV)による怪我の写真や医師の診断書も確保しましょう。
また、家族や第三者に対する相談をした場合には、その相談内容が分かる資料(LINE等)も証拠になりますから、その履歴を消さないようにご注意ください。もちろん、相手方からの直接的暴言が記載されたLINE等も有益な証拠となります。
5. まとめ
以上のとおり、ギャンブル依存症の離婚率と、ギャンブル依存症を理由に離婚する方法について解説しました。ギャンブル依存症は、離婚を考える上で十分な理由となり得ます。まずは協議、次に調停、そして裁判という段階を踏むことになりますが、裁判で離婚を認めてもらうためには、依存症によって引き起こされた経済的破綻や精神的・肉体的苦痛を示す証拠を揃えることが非常に重要です。
また、ギャンブル依存症の配偶者との離婚は、借金問題や慰謝料、養育費の不払いリスクが絡み、複雑になりがちです。離婚協議中に交わした約束を相手方が守らない場合の対応まで事前に検討しておくべきです。
このような離婚事件においては、ご自身の安全と新たな生活のために、一人で抱え込まず、早い段階で弁護士などの専門家に相談し、適切なサポートを受けながら離婚手続を進めることを強く推奨します。当事務所では、DV案件も含めて複雑な離婚事件を多く扱ってきた実績があります。ギャンブル依存症の配偶者にお悩みの場合には、離婚決断前でも結構ですから、ぜひ、当事務所にご相談ください。あなたからのご相談をお待ちしております。
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