離婚公正証書の基本と必要性
皆さんは、「離婚」をする際の夫婦間の取り決めについて、どのようにするべきかイメージが湧くでしょうか?
なんとなく、「緑色の離婚届けを役所に出すことかな?」、「離婚協議書を書くべきとは聞くけど、自分たちで作れば良いのかな?」といった程度のご認識の方が多いのではないかと思います。このような方には、ぜひ離婚公正証書を作成されることをお勧めいたします。
やはり、離婚後の自分を守る上では、法的効力の強いものを残しておくべきです。
以下の記事をご参考に、離婚公正証書に関するご理解を深めていただき、その作成をご検討いただければと思います。
離婚公正証書とは?
そもそも離婚公正証書とは、公証役場(又は公証センター)にて、公証人という専門家のもとで作成する、法的拘束力の強い「離婚協議書」を意味します。公正証書として離婚協議書を作成し、かつ、その中に「強制執行認諾文言(強制執行受諾文言)」という特別な条項を入れると、のちに養育費等の不払いがあったときに、直ちに強制執行をすることが可能となります。
離婚公正証書は必要か?
昨今の日本では、3組に1組の夫婦が離婚すると言われています。この離婚のうち大半は、離婚届を役所に提出して離婚します(いわゆる協議離婚)。この場合、特に子どもに関する取り決めはほとんどなされないのが実情です。
未成年の子どもがいる場合には、子どもの今後の生活費・養育費を、子どもの面倒を見る側の親(監護親)が支出することとなります。多くの場合、離婚後に未成年の子どもの面倒を見るのは母親ですから、シングルマザーとして生計を立てていくことに苦労をされる方ばかりとなります。
このような事態を回避するためには、離婚公正証書を作成して養育費について適切な定めを置き、もしもの場合の強制執行の準備までしておくべきです。
どのようなケースで必要になるか
このように、未成年の子どもがいる夫婦で、夫婦間において離婚すること自体についてはお互いの同意が取れている状況であれば、離婚公正証書が必要といえます。特に未成年の子どもを育てるシングルマザーとなる場合には、養育費の支払を確実なものとするために、離婚公正証書が必須といえるでしょう。
離婚公正証書に関するメリットとデメリット
さて、それでは離婚公正証書には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
公正証書の効力とメリット
公正証書の効力は、先ほど述べたとおり、
また、公正証書は、公証役場において作成したのち、公証役場が半永久的にその内容を保存してくれます。このため、紛失のおそれもありません。
更に、公正証書は、公証人という専門家による意思確認を受けながら、当事者双方が立ち会って確認をした上で作成されます。このため、相手方がのちにその内容に異を唱えたとしても、公正証書の効力が覆る場合は多くありません。この点も、公正証書のメリットです。
公正証書が無効になる場合の注意点
但し、公正証書の内容から、公正証書の全部または一部が無効となってしますことはあり得ます。例えば、お互いの再婚を禁止する条項を入れるなど、お互いの自由を著しく制限する内容としたり、何を意味するのか法的には曖昧なまま合意をしたりした場合には、公正証書の効力が充分に活きない可能性がでてきます。
公証人の中には、具体的に「この条項をこのように修正したらどうか。」といった提案をしてくれる方もいますが、何も助言をしないままに公正証書を作成する公証人もいます。このように公正証書が無効とならないように、作成時には必ず弁護士の助言を受けるべきといえるでしょう。
デメリットとして考慮すべき点
上記の注意点のほかに、公正証書を作成する場合には、公証役場へ手数料を支払うなどの費用がかかることと、
離婚公正証書作成の手順と準備
離婚公正証書作成の流れ
離婚公正証書を作成する場合には、以下のような流れで作成をします。
① 離婚公正証書の案を作成する
※弁護士へのご相談をお勧めします。
② 公証役場の事前予約をとる
なお、離婚公正証書はどの公証役場でも作成できます。
③ 公証役場に、文案と必要書類をFAX又はメールで送信する
④ 当日、公証役場に夫婦2人で行き、公正証書を作成する
※弁護士に依頼をされた場合には、弁護士が同席いたします。
準備する書類と条件
公証役場において離婚公正証書を作成する際には、
・夫婦両名の本人確認書類夫婦の戸籍謄本
・財産分与する場合には分与の対象となる財産を示す資料
・年金分割をする場合には両名の年金手帳と「年金分割のための情報提供通知書」
など、多くの資料を要します。
また、上述しましたとおり、相手方が公正証書の内容に納得していること・同意していることが公正証書作成の条件となります。
これらの資料整理・相手方を納得させるための交渉が必要でしたら、弁護士へのご依頼が必要でしょう。
公証役場での手続き方法
公証役場では、事前にFAXやメールで作成した文案全文について、公証人が簡単に説明しながら読み聞かせてくれます。夫婦が同席の上でこれを読み聞きして確認し、誤りがないことを確認してから離婚公正証書に署名押印をします。
これによって離婚公正証書が完成し、以後、半永久的に公証役場が公正証書を保管してくれることとなります。
離婚公正証書に記載するべき事項
離婚公正証書を作成するのであれば、以下の事項については記載をするべきでしょう。
・離婚合意
・離婚届提出者、提出時期
※この点について定めを置き、離婚届提出を忘れないようにしましょう。
離婚届も公証役場に持参して、公正証書作成後直ちに離婚届も作成してしまう方が、その後のやり取りを省略できておすすめです。
・親権者、監護権者
・面会交流
・養育費
・慰謝料
・財産分与
※住宅ローン付きの不動産、自動車等、一定の価値がある資産を
・年金分割
・強制執行認諾文言
※公正証書を作成するのであれば、強制執行を可能とするために、必ずこの条項を入れるべきです。
離婚公正証書を自分で作成する方法
役場における必要書類の提出方法
離婚公正証書をご自身で作成する場合には、公証役場とご自身で問い合わせ・調整を行うこととなります。まずは夫婦両名が平日の日中に立ち会うことのできる公証役場を探しましょう。別居中の場合には、いずれかの自宅に近い場所を選択することとなるでしょうか。
公証役場に離婚公正証書の作成についての予約の連絡をしますと、必要書類等の案内がなされます。基本的には、FAX・メール等の手段を用いて必要書類と公正証書の文案を送ってから、日程調整をし、当日を迎えることとなります。
離婚公正証書を作成する際には、夫婦両名が互いに資料を準備する必要があり、また、離婚公正証書の内容について協議・合意を要します。このため、離婚に向けた話し合いはできる程度に、一定程度の関係性が保たれている必要があるといえます。
書き方と記載するべき要点
離婚公正証書を作成する場合には、公正証書という形式をとるため、形式面での注意点が多くあります。例えば、養育費・財産分与・慰謝料などの金銭支払を義務付ける条項ひとつをとっても、①いつ支払うのか、②いくら払うのか、③どうやって払うのか、④銀行振込の場合、振込手数料はどちらの負担とするのか、⑤(養育費の場合)いつまで支払うのか、⑥支払いがなかった場合はどういったペナルティーを科すのかといった事項を定める必要があります。
また、面会交流の規定を置くのであれば、夫婦間が面会交流のための協議をすることができる関係であれば簡単な規定のみを置きますし、夫婦間でのやり取りを極力減らしたいのであれば細かく具体的な規定を置きます。このように、具体的に「離婚後、どの程度連絡をやり取りする必要があるのだろう。」といった点もイメージしながら条項を作っていく必要があります。
作成時に利用するひな形やサンプル
さて、では、離婚公正証書を作成する場合のひな形・サンプルをご紹介いたします。当事務所のHP掲載のひな形をご覧ください。
離婚協議書書式例・無料ダウンロードこちらの記載例はあくまでも一般的・最大公約数的な条項を置いただけの内容となっていますのでご注意ください。あくまでも基本的な内容だけ定めるとすれば、このような内容となります。
また、記載例には、強制執行認諾文言も記載されていませんので、強制執行を可能とする場合には、必ずこの文言も入れる必要があることにご注意ください。
離婚公正証書作成依頼に関する費用と料金
離婚公正証書作成に関する費用などについてもご案内いたします。
公正証書作成にかかる費用の内訳
離婚公正証書を作成する場合にかかる費用としては、以下のものが考えられますので、ご参考にしてください。
① 離婚公正証書作成費用
※手数料として数万円かかることが一般的です
② 各種必要書類の取得費用
③ 弁護士に依頼する場合は、弁護士費用
弁護士や専門家に依頼する費用感
弁護士に離婚公正証書作成を依頼した場合の費用感としては、10~20万円程度が相場であろうと考えられます。当事務所は、比較的安価で離婚公正証書作成のご依頼を受けておりますし、初回相談は60分間無料(電話・ZOOMを利用したオンライン相談も承っています。)となっております。詳細については以下のページをご覧ください。
弁護士費用公正証書作成時には、公証人から内容の修正を求められることもありますし、形式的な注意点が多々あります。場合によっては、条項自体が無効となってしまうこともあります。費用が増えることとはなりますが、ぜひ、当事務所へ一度ご相談ください。
離婚公正証書違反時の対応と強制執行
離婚公正証書の強制執行と効力
さて、離婚公正証書に記載した内容、特に、養育費・財産分与・慰謝料などの金銭支払を義務付ける内容に違反があった場合には、まさに「公正証書」の出番となります。離婚公正証書に強制執行認諾文言が入っていれば、金銭支払が滞った際に、給与の差押え・預金の差押えなどの強制執行が可能となります。
違反が生じた場合の対応策
相手方に違反が生じた際には、すぐに弁護士に相談して強制執行をご検討されることをお勧めいたします。もちろん、違反があった場合に、相手方に対して「このまま支払をしないのであれば強制執行をします。」と伝えるだけで支払ってくれる場合も多々あります。
まずは弁護士にご相談いただくべきでしょう。
トラブルを避けるための注意点
このような離婚公正証書の内容への違反・これに伴うトラブルを避けるためには、公正証書作成時に、強制執行認諾文言の内容について相手方に丁寧に説明しておくべきでしょう。やはり、「もしかしたら給与を差し押さえられるかもしれない。」という圧力がかかっていれば、なかなか支払をしないという事態には至らないでしょう。
弁護士に公正証書の作成を依頼するメリット
以上のとおり、離婚公正証書のメリット・デメリットについてご説明しました。弁護士に公正証書を作成した方が、離婚公正証書の内容にミスが生じることを防げます。ぜひ、離婚公正証書作成をお考えの場合には、当事務所へご相談ください。
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