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【7話】モラハラ夫との旅行

小説版

モラハラ夫との婚姻期間の10年間で、私がモラハラ夫と旅行に行ったのは4回ほどでした。

この回数、私は少ないと感じています。皆様はいかがでしょうか。

余談ですが、私の趣味は温泉に行くことと散歩をすることで、温泉旅行に行くことが昔から大好きです。
普段から銭湯に行くことが大好きで、モラハラ夫と出会う前の学生時代は、アルバイトの帰りによく一人で、近所のスーパー銭湯へ愛用の原付に乗って出かけたものです。

モラハラ夫と一緒になってからは、温泉旅行に行くことも、銭湯に行くことも、格段に減ってしまいました。

このモラハラ夫を旅行に連れ出すまでには、様々な壁を乗り越えなければならず、大変な苦労があります。
また、ようやく旅行に連れ出せたとしても、旅行の最中、私は常にビクビクしながら、いつ何時、モラハラスイッチが入ってしまうのではないかと、終始気を遣い続けていました。

まず乗り越えなければならない壁の一つが、私からモラハラ夫に対して、旅行に行きたいと提案するところから始まります。
すると、モラハラ夫から「本当にその旅行は今の自分たちにとって必要なのか?」と懇々と説かれます。

よく言われていたことが
「旅行に行くことによって出費があり、それによって、自分たちの将来に回せる貯蓄が減る。
旅行は今行くべきではなくて、将来ある程度歳をとってからでも遅くはない。
ただ、お前がそれを犠牲にしてまで行きたいというなら、しっかりとした旅行計画を立ててから提案してくるように」ということです。

ちなみに、当時の私たち二人の収入は、私のほうがモラハラ夫よりも高く、旅行の費用もほぼ私が捻出しておりました。しかしながら、家計の収入として入ってきたものであれば、それは二人のものでした。
これらのやり取りによって、私がこれまで諦めた旅行が何度もありました。

それでも何とか過去4回、モラハラ夫を旅行に連れ出せたのは、私が行きたい場所ではなく、モラハラ夫が行きたい場所だったからです。
過去4回の旅行で、私が大好きな温泉に入れたのは1回だけでした。

そして、モラハラ夫と旅行に行くと、必ずモラハラ夫のモラハラスイッチが入り、苦しい思いをしながら自宅に帰る、というのが常でした。

具体的なエピソードを2つご紹介しましょう。
① 『4時間歩き続けた帰り道』
旅行先に着いてからの具体的な行動計画を立てていなかった私に対して、モラハラ夫が「お前は女子力がない」と腹を立て、
本来であれば特急列車を使って帰るはずの道のりを、キレたモラハラ夫が「歩いて帰る」と言い出したため、真夏の炎天下を4時間歩き続けたことがあります。
その時の私は、早足で歩くモラハラ夫の数メートル後ろを、ひたすら謝りながらついて行きました。

モラハラ夫が歩き疲れたため、途中で電車に乗ることができ、無事、帰宅することができました。
(帰宅してからも無視され続けましたので、無事とは言い難いかもしれません)

②『撮れなかった記念写真』
1泊2日の旅行で、とある観光スポットに行きました。
そこはコスプレをしている人が多く集まる場所でした。モラハラ夫はコスプレをする人に興味があります。
(要参照「(2)言葉は凶器 いつも取られる言葉の揚げ足」)

その観光スポットには、2日目の早朝から出かけました。
観光スポットに到着してまもなく、モラハラ夫が興味のあるコスプレイヤーが、私たちの数メートル前を通りがかったのです。
すると、私はモラハラ夫から「一緒に写真を撮るように声を掛けてきて」と言われました。
ところが、ちょうどそのときでした。
私は、早朝ということもあり、急な腹痛に見舞われてしまったのです。
「ごめんね。めちゃめちゃお腹痛くなってきたの。お手洗いに行ってからでいい?」

私は、取り返しの付かないことを言ってしまったようです。

お手洗いへ行くことはできました。
しかしながら、そのコスプレイヤーと写真を撮ることはできませんでした。
その後は、ひたすら言葉の暴力を浴びせられ続けました。
帰りの新幹線の中、帰宅してから、そしてその後の2週間。
「妻の腹痛のせいで、一生に一度撮れるか撮れないかわからないコスプレイヤーとの記念写真が撮れなかった」という、モラハラ夫の後悔という名のモラハラを浴びせられ続けたのでした。

モラハラ夫と離れた今になってみれば、こんなに辛い思いをする旅行ならば、10年間のうち4回で済んで良かったと思います。
けれど、当時の私は、旅行がこんな辛い結果になってしまうのは、間違いなく自分のせいなのだと、自分自身を強く責めていたのです。
清武 茶々

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