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【35話】人生でいちばん長い日の前の日

小説版

「何か大変なことがあったんでしょう?!」

私にとって救いであった母の声は、一方で私とモラハラ夫の別離を意味しました。

前回、ついに私が母に救いを求めたまでのエピソードをご紹介させていただきました。

今回はその続きをご紹介させていただきます。

母からの電話での問いかけに対して、皆さんはきっと私が「モラハラ夫と別れたい。どうにかしてほしい」と懇願することを予想されたかと思います。

しかしながら、私の第一声はそうではありませんでした。

私の第一声はこうでした。

「お母さん、私たち夫婦の関係を修復して欲しい。」

私は、モラハラ夫と婚姻してから、夫のことを母に話すことは、この10年間ほとんどありませんでした。モラハラ夫と婚姻してからの私は、モラハラ夫からの言いつけもあり、実家へ帰ることもほとんどなかったため、私は両親とすっかり疎遠になっていました。

母にとって、私の夫の話を聞くのは初めてに等しいようなものでした。

それから、私はこうも続けました。

「夫が、私のせいで精神のバランスを崩してしまったの。全部私のせいなの。夫は何も悪くないの。」

私は都会のど真ん中で大泣きしながら、母に対して、なぜ夫がこんなふうになってしまったのか、それはすべて私のせいであり、キッカケは私が夫に隠れて買い物をしてからだという話を延々と、時間にして15分程一方的に話していました。

はじめは落ち着いた様子で話を聞いてくれていた母でしたが、私の話が終わる頃の母の声は震えていました。

母の震えは”怒り”によるものでした。

母は私の話を一通り聞いた後、モラハラ夫に対する怒りに満ちた声でこう言いました。

「あなた、それは洗脳だよ。あなたのどこが悪いの?!こんな話を聞かされて、お母さんがじっとしていられるわけないじゃないの。」

その後も、私は母に対して、夫がこんなふうになったのは自分のせいであり、夫は本当は優しい人なんだということを言い続けていました。

しかしながら、年齢が30を過ぎた大の大人になった我が子が、大泣きしながら電話をしてきています。

我が子が普通の精神状態ではないことを、母は感じていました。

その電話の翌日、母から私の携帯電話に1通の短いメールが届きました。

(母。明日。行く。朝一の飛行機で。)

母は、私がモラハラ夫に四六時中監視されている状態だと認識したようで、メールを短文にすることで、モラハラ夫に怪しまれないようにした最大限の気遣いでした。

私もそのメールに対して短い返信をしました。

(わかった。空港に迎えに行く。)

そして、そのやり取りをした次の日、私は会社に体調不良で欠勤することを連絡し、モラハラ夫には会社に出勤したように見せかけて、空港へと母を迎えに行ったのです。

ちなみに、私がその日以降、会社に出勤することは二度とありませんでした。

空港で出迎えた母の顔はとても神妙な面持ちでした。
ひとまず私と母は、私の自宅の最寄り駅まで向かいました。駅までの道中、私と母は一言も会話をすることはありませんでした。

最寄り駅に着いてようやく、母から口を開きました。

「少し話そうか。」

私たち二人は駅の近くの喫茶店で話をすることにしました。

母は私に、私の夫が世間一般で言う「モラハラ夫」であることを、静かな口調でとうとうと話しはじめました。

母の言葉は私の胸に深く突き刺さりました。
けれども、それは私自身もすべて分かっていたことでした。

これまで分かってはいたものの、直視したくなかった現実でした。

母は私にモラハラ夫と別れることを促してきました。

「あなたはまだ若い。まだまだこの先いい人と出会えるから。大丈夫だから」と。

母に現実を突きつけられた私は、ようやく現実と向き合うことにしたのです。

私はボロボロと大粒の涙を流しながら母に言いました。

「別れたい。」

ついにモラハラ夫と別れる決意を固めたのです。

しかしながら、母も私と女二人でモラハラ夫に向き合うことが怖かったようです。

ちなみに、母の感じた怖さは、モラハラ夫が暴力を振るってきてしまうのではないのかというものでした。

「お父さんも呼ぼう。」

そうして、万が一の事態に備えて、父もモラハラ夫との話し合いに参加することになったのです。

父は、翌日の飛行機で私たちの所へ来ることになったため、その日、私は母と二人でビジネスホテルに宿泊することにしました。

私はモラハラ夫と婚姻してはじめて無断外泊をすることになりました。

無断外泊をすることが決まってからは携帯電話の電源もオフにしました。

その日の夜、私は、今までに感じたことのない、安堵と不安の波が交互にやって来る、とても複雑な感情を抱いていました。
「きっと彼は私のことを心配しているに違いない。」

私は、何度も携帯電話の電源を入れたい衝動に駆られました。

やがて私は、電源を切ったままの携帯電話をずっと手に握りしめながら、これから迎える人生でいちばん長い日の前の日の眠りに就いたのでした。

清武 茶々

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