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【第25話】買い物はモラハラ夫に隠れて

小説版

これまでも幾度となくご紹介していますが、私の仕事はアパレル販売でした。

私の勤務していた会社で扱っている商品は、単価が数十万を超えるものがほとんどでした。

アパレル販売の会社では、自社の商品を購入することをよく耳にするかと思いますが、私の会社では、商品の単価が高いこともあり、社員に自社の商品を購入することを強く勧めることはなく、社員が欲しいものがあれば購入するといった方針をとっておりました。

私も入社してから数年は自社の商品を購入することはありませんでした。

しかしながら、店長になると話は変わってきました。店舗の売上を少しでも補うために、単価数十万円の商品を購入しなければならなくなってしまったのです。


今回は、私が店長になり、モラハラ夫に隠れてしてきた自社の商品の買い物の話、それがモラハラ夫に露呈するまでの話をご紹介させていただきます。


店長になって初めて私が自社の商品を買ったのは、赴任して一週間も経たないときで、ちょうどその時、店舗ではフェアと称して、お得意様をお呼びした販売会を数日間実施していました。

私が店長になって初めての販売会で、実施期間中は思いのほか大盛況でした。最終日を迎え、予算も無事に達成し、私も初陣となる販売会が大成功したことに機嫌を良くしていました。

上機嫌のなか、販売会の商品の後片付けをしていると、ふと、ひとつの商品に目が留まりました。私は、その商品に一目惚れしてしまったのです。

金額は数十万するものでしたが、自分の中で「店長の就任祝い、自分へのご褒美」と思い込ませて、数回のローンを組んで購入することにしたのです。


もちろん、この買い物はモラハラ夫には内緒でした。

モラハラ夫は、モラハラ夫自身が欲しいものを買うときは、私に対して巧みな話術を使ってねだり、欲しいものを必ず手に入れるのですが、私の欲しいものについては、かなりシビアで、私が欲しいものがあることを相談すると、激しいモラハラを繰り出すため、私が自分の欲しいものを手に入れることは至難の業でした。

私は初めてモラハラ夫に隠れて大きな買い物をしたのです。

私のモラハラ夫は、私の名義の通帳を逐一管理して、収支を事細かに確認するタイプではありませんでした。

私の給料は毎月変動するので、私は自分の給料をモラハラ夫に口頭で伝え、家賃や水道光熱費とは別に数万円の生活費をモラハラ夫に渡すという家計管理をしていました。


この買い物は数回のローンを組んでおり、毎月の返済額は数千円でした。この程度の支出であればモラハラ夫にはバレないだろうと考えたのです。

結果としてまったくバレませんでした。

ちなみに、モラハラ夫と離れてもなお、現在も一切バレていません。

私は学習しました。毎月、少々の支出ならば、モラハラ夫にバレることなく、自分の欲しいものの買い物ができるのだと。


この一件から、私はモラハラ夫に隠れて、自社の商品をローンを組んで買うようになったのです。

この企みは面白いほど成功しました。また、私が隠れて購入した商品を自宅に持ち帰る際は、モラハラ夫に対して「これは店舗の年配の社員にもらった」と言い訳をすれば通用していました。


そんな買い物を数回繰り返して2年弱が経った頃のことでした。

ついに私の買い物が露呈するときがきたのです。


それは、いつものように私がモラハラ夫からモラハラをされている夜のことでした。

この頃は、様々な事由が重なり、毎晩激しいモラハラを受けている婚姻期間も終盤の頃でした。

私は、毎晩のように深夜まで夫からのモラハラを受け、大泣きする日々が続いていました。


露呈した買い物は、ボーナス払いで購入した商品のことでした。ボーナス払いと言いましても、一括ではなく、数回に分けてのボーナス払いでした。


その日のモラハラは、家計のことについてのモラハラでした。

モラハラ夫が私にモラハラを繰り出しながら、突如「お前、今年のボーナス少なくないか?」と問い詰めてきたのです。

私は、内緒の買い物を隠すために、モラハラ夫にはボーナスの額を少なく伝えていたのです。

けれど、これまでも数年、私が会社から支給されていたボーナスの額をモラハラ夫は把握していたため、ボーナスの額が少ないのではないかと感づいたのでした。

私は全身の血の気が一気に引きました。

なんとかごまかさねばと、必死にその話題から逃げだそうと話題をすり替えることを試みました。

けれど、そんな悪あがきも空しく、ついに私は、ボーナス払いで購入した1回の買い物についてだけを白状することにしたのです(他の買い物は決して白状することはありませんでした)。


私は泣きながら謝り、なんとかその場を凌ごうと、自分がこの買い物をしたのは、売上の補填のためだったと、自分の意思ではないことを主張したのです。

こんな言い分で許してもらえるはずもありません。

また、こんな言い分をしたがために、モラハラ夫は次第に私の会社へと矛先を向け始めたのですが、それはまた別のエピソードにてご紹介させていただきます。

話を戻しまして、モラハラ夫は私に言うのです。

「俺は、勝手に金を使い込まれることがいかに嫌か知ってるはずだろう。昔親に同じことをされて、どんなに嫌だったか言ったはずだ。お前は親と同じことをしたんだ」と。(※要参照(14)モラハラ夫の生い立ち)

しかしながら、皆様、お気づきかと思いますが、私はモラハラ夫の給料に勝手に手を付けたわけではありません。

私が自分で稼いだお金で自分の好きなものを買っているだけです。

ですが、そんな理屈はモラハラ夫に通用するはずがありません。


ちなみに、私がボーナス払いで購入した商品は、シルク素材の商品でした。

その日から、モラハラ夫はいつものモラハラだけでなく、私に対して、ある画像を1日に何十件も送ってくるようになったのです。


その画像とは「蚕」の画像でした。蚕はシルクの原材料です。

ただ、蚕は昆虫の一種ですので、蚕及び蚕のアップ画像は、よほどの昆虫好きでない限り、見ていて苦しいものがあります。

モラハラ夫は蚕のアップ画像を1日に何十件も私に送りつけ、なおかつ、こういった文章を付け加えるのです。

「お前はこんな虫の口から吐き出されたものに何十万もかけたんだ。気持ち悪い。シルク製品なんて虫の成分の集まりだ。そんなものに大金を出せるお前の頭はおかしい。気が知れない。」

こんなメールを一日に何十件も送りつけてこられると、私は徐々に心が壊れていきました。


そして、私が隠れて買い物をしたことが露呈したこの一件から、私たち夫婦の関係は一気にジェットコースターの如く激しく崩れ始めたのです。

私は次第に生きることへの苦しみを感じるようにもなってきたのです。

清武 茶々

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